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西郷港から徒歩約7分、素朴な島の暮らしが聞こえる西町に佇む『Hito_Naka西町』。
大正2年建築の古民家をフルリノベーションし、ゲストハウスとして蘇らせた。
設計・デザインを担当したのは『大津建築設計』の大津崇也さん、施工は『吉崎工務店』の吉崎英一郎さん。
隠岐で生まれ育った二人に、リノベーションと町づくりへの思いを語ってもらった。
「床が抜け、川側の外壁が崩れ、けっこうすごい状態だったんですよ」と大津さんは依頼を受けた頃を振り返る。ベースとなった古民家はほぼ廃墟。構造部分から大規模な修繕が必要となった。
「清潔感がなければ居心地は良くならない。かといって子綺麗な形に収まっては面白くないので、古さと新しさのバランスを取るように努めました」。居室はスクエアの琉球畳が敷かれ、落ち着いたトーンの壁材と無垢材を使った建具が並び、和モダンなスタイル。アクセントとなるのは古材の梁や柱。横木をはめた穴や木肌から脂が滲み出た跡などが意図的に残され、ふとした瞬間、建物が町とともに重ねてきた時間の厚みが立ちのぼる。
1階には土間タイプのキッチンがある。八尾川に向かって掃き出し窓が開かれ、フラリと外へ出たくなる雰囲気だ。「将来的には外でバーベキューやグランピングを、と考えていますが、何より町に出かけたい気持ちになってほしくて外とのつながりを意識した構造にしました」。朝夕に川を漁船が行き交い、向こう岸に港町が広がり旅人を誘う。宿のそばにある『石谷食料品店』や『木村屋パン店』で食材を仕入れて朝食や酒の肴をこしらえるのも楽しいだろう。2階ホールにも大窓が開かれ、町の一日の営みを感じられる。内と外に有機的なつながりを持たせることで地域の人たちも旅人の気配に触れられるだろう。
『吉崎工務店』では木造建築の構造物に隠岐の木材を使っている。「私たちにとっては当たり前のこと。輸送コストが少ないだけでなく、質が風土に合う。最近はSDGsや地産地消という言葉をよく耳にしますが、私たちは〝周回遅れの先頭〟かもしれない」と吉崎さんは笑う。吉崎さんは今回のリノベーションにも隠岐の木材を使用した。提供したのは隠岐島町の『池田材木店』。同社の池田明生さんは島内産木材の普及に力を入れている。西町にある京見屋分店のカフェスペースのテーブルは、池田さんが「隠岐の木を身近に感じてもらう方法はないか」と試験的に作り、その思いに共感した吉崎さんが持ち込んだもの。そこへ自然と人が集まるようになり、店主夫妻の思いも重なってカフェが誕生した。今では島内外から多くの人が訪れている。
池田明生さんは『Hito_Naka港町』のデザインを手掛けた池田暢一郎さんの弟でもある。暢一郎さんもまた、島の豊かさを伝えるため『Hito_Naka港町』に隠岐の黒松を使った。「小さいコミュニティの昔なじみが一緒に仕事しているようなものです」と吉崎さんは言うが、一人一人の思いは隠岐の木をキーワードにして意図せず連鎖している。『京見屋分店』には人が集まるスペースができ、西町と港町にはゲストハウスが生まれた。ふるさとへの思いが結びつき、誰かの〝居場所〟を創り続けているのだ。
大津さんと吉崎さんが描く未来は、西町と周辺エリアで商いを営む人々のビジョンとも重なる。雑貨店、カフェ、食料品店、ブティック、パン屋、和菓子屋…多様な店がある中に、ゲストハウス『 Hito_Nakam港町』、そして『Hito_Naka西町』が加わった。町はこれから少しずつ変化していくだろう。そしてそれぞれの思いはつながり、いつか町全体が人を呼ぶ〝居場所〟になっていく。そこは島の外にも内にも開かれた、温もりのある場所になるに違いない。
住所 | 島根県隠岐郡隠岐の島町中町名田の二6-6 |
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TEL | 08512-2-6234 |
住所 | 島根県隠岐郡隠岐の島町東郷亀尻5番地1 |
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TEL | 08512-2-1574 |
HP | https://yoshizaki.co.jp/ |