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hitonaka story Prologue『商店街の営みに泊まる』

島の内外から人がやってくる〝ハブ空港〟、これからの商店街への希望

西町通りの西の端、カッパ大明神の祠のそばにたつ『京見屋分店』。
「贈り物 雑貨とお土産処」と表に書かれているが、ここを訪れる人たちは買い物だけが目的ではない。店主の谷田晃さん・一子さんに会い、共に時間を過ごす時間を楽しみにやってくるのだ。

Keyword 1“町の荒物屋さん„を生まれ変わらせる

 店内は温もりのある木の棚が並び、多彩な商品が所狭しと置かれている。お土産にぴったりの隠岐の産品、地元の水産高校が作った加工食品、島根の窯を中心に集めた器、素朴な民芸品、アウトドア用品、コーヒー、本…。店主夫妻がこだわりを持って選んだものばかり。奥にはカフェコーナーがあり、カウンターでコーヒーやクラフトビールを提供。テーブルのそばの棚にはレコードが並び、眺めているだけでも楽しい。

 70年前ほど前に創業した店を晃さんの代でリニューアルした。元の店はお茶屋から始まり、徐々に日用品なども揃え、所謂〝町の荒物屋〟になっていった。「リニューアル後も、しばらくのあいだ輪ゴムを買いに来るおばあちゃんがいました」と笑う晃さん。「困ったらあの店へ」「京見屋には良いものがある」と町で重宝されていたことが伺える。
 リニューアル後は元の店をベースに商いを始め、徐々に雑貨や土産などを置くようになっていった。「2年めぐらいから私の出身地である出雲の出西窯の器などを入荷して、その関係で出会った人たちの紹介で島根の産品や民芸品なども扱うように…。少しずつ商品が増えていきました」と一子さん。商品が増えるとともに棚が増えしつらいも変わっていった。

Keyword 2思い・出会い・縁によって変わり続ける場所

 リニューアル当初はなかったカフェコーナーを作るきっかけになったのは、一卓のテーブルだった。現在も店のシンボルのように鎮座するそれは、地元の『吉崎工務店』が作ったもの。「隠岐の木のプロジェクトを始めたくて、とりあえず作ってみたから置かせてほしい」と言われるまま設置。いつの間にか客や近所の人たちがゆったり過ごしはじめ、夫妻もお茶を出してもてなすように。その雰囲気は完全にカフェ。『吉崎工務店』からの後押しもあり、カフェコーナーにリフォームする流れになった。最近は日曜限定でモーニングメニューも提供するようになっている。
 『吉崎工務店』の代表は「この店はサグラダ・ファミリアみたいなもんだ」と言ったそうだ。人が集い、思いや出会いが重なって変化していくさまは、確かにサグラダ・ファミリア似ている。今では夫妻と旅人が、旅人同士が、旅人と町の人が、別の島から来た人とこの町の人が、楽しくおしゃべりをし縁を結ぶ場所になった。木目が美しい一枚板のテーブルには傷や凹みができている。さまざまな人がここで過ごした証だ。

Keyword 3旅路と縁をつなぐハブ空港

 『京見屋分店』がどんな店かと問われると、一言では説明しにくい。単純な「カフェを併設した雑貨店」ではなく、島内外から自然と人が集まる場所なのだ。とにかく居心地が良い。木の棚やテーブル、自然光とあたたかい照明の光が混じる空間、暮らしを彩ってくれるこだわりの品々、おいしいコーヒー、そして何より店主夫妻の存在。程よい距離感で気さくに話しかけてくれ、初対面でもちょっと身の上話でもしたくなるような独特の気安さがある。

 仕事やレジャーで隠岐に来るたびに立ち寄る人、店主夫妻や町の人たちと過ごしてから隠岐諸島を巡りまた戻ってくる旅人などもいる。「うちは隠岐に移住して間もない人が通ってくることも多いんです。最初のうちは心細そうな様子で店内をのぞいていて、だんだん一緒にお茶を飲むようになって、島事情を質問されたりして…。そうして頻繁に顔を見ているうちに、少しずつ来店の感覚があくようになる。そんな時、『きっとご自身の居場所がみつかったんだな』と思います」と一子さん。
 「何年も通って長く愛してもらえるのが一番。それと同時に、本当の居場所を探す人が羽を休める止まり木みたいな場所としてここに在るのも良いかな、と」。居場所や出会いなど、それぞれの〝目的地〟を探す人たちが集う『京見屋分店』。それぞれがここで心地良い時間を過ごし、新しい仲間を見つけたり、別の場所へと旅立ったり、生活拠点に帰ったり、また戻ってきたり…。まるで人生の旅路と縁をつなぐハブ空港のようだと感じた。「ハブ空港になれているのかな?なれていたら嬉しい。所謂〝関係人口〟を増やすような役割が結果としてできていると良いんですが」と晃さん。穏やかに語る夫妻の表情は、優しくやわらかい。

Keyword 4面白い人がいる〝会いたい町〟へ

 店主夫妻を訪ねてやってきた旅人の青年を、近所の人が家に連れて帰って夕飯を食べさせたことがあったそうだ。「お礼に庭の草抜きをしていましたよ。この辺りでは、見慣れない人がいたら声をかけたり、面倒を見たりすることがけっこうある」と晃さん。オープンな姿勢は晃さんと一子さんに限らないようだ。転勤で島後に短期移住し、結婚を機に定住した一子さんは、隠岐に新しい風を受け入れる雰囲気を感じている。「隠岐は昔、流刑の地でした。島の人たちは流人たちを閉じ込めず、共同体に受け入れていたそうです。そんな先人の心が土地に残っているんじゃないでしょうか」

 今後はコミュニティスペースのリニューアルなどを進め、より過ごしやすい空間にしていくそうだ。「今はものを売るのが大変な時代。形が変わっても残っていけるよう続けていきたい」と晃さんは言う。「そう思っているタイミングでHito_Naka港町ができて、次は西町。西町通りを目的地に来てもらえるようになるといいですね。この辺りは面白い人ばっかりですしね!」
 『京見屋分店』にやってくる旅人の中は、観光地に遊びに行かず、本を読んだり店主夫妻や近所の人と話して過ごすことだけが目的の人もいる。〝何もしない贅沢〟を味わっているのだ。 Hito_Nakaを拠点に、西町通りにロングステイするのも楽しいかもしれない。隠岐の観光は自然の中でのアクティビティが主流。海と島の美しさを堪能する体験は、心身を健やかにする。一方で、人との出会いもそれに劣らない。素朴な営みを続ける町の人の中で、同じ時間を過ごすことでしか得られないものが、きっとある。

京見屋分店
器、隠岐・島根の産品、民芸品、暮らしの品、アウトドア用品などが並ぶ。店内にはカフェコーナーがあり、コーヒーやクラフトビールを飲みながらオーナー夫妻との会話を楽しむのもオススメ。
住所 島根県隠岐郡隠岐の島町西町八尾3-81 pin
営業時間 10:00〜19:30
定休日 火曜日
TEL 08512-2-0425
FAX 08512-2-2930
WEB https://kyomiyabunten.com